maiden
約束の場所で待つI氏にニッコリ微笑んで手を振る。
I氏もほんの少し照れ笑いをしながら手をあげる。
初々しい私。初々しいI氏
イロイロな事があったけれど、リセットしてきた。
きっとI氏も。
前のめり気味だった感情が削ぎ落とされて、
すっきりと向き合えた。
「こんにちは。お待たせいたしました」
「こんにちは。調子良さそうですね」
「はい。お陰さまで」
夏休みに気力体力をチャージして、
それがまだ残っている。
体は軽く、肌の色艶も上々。
もちろんそれだけではない。
I氏に会えた瞬間、花がパッと開くように、
嬉しさが顔、体全体からほとばしる。
私は、ご機嫌そのもの。
程よい距離を保ちながら歩き、
I氏が予約を入れてくれていたお店に入った。
オープンしたての中華レストランは、
ランチの時間真っ只中で、ビジネスパーソンで溢れている。
「予約を入れてくださって、ありがとうございました。
人気のあるお店ですのね」
「私も始めてなんです。今日は一緒に中華を食べたくて」
お皿に盛られた料理を取り分ける。
「これは?」
「この位?」
「ありがとう」
「その位で」
大皿の炒め物から、小さな点心までも分け合う。
焼肉を食べる男女はアヤシイという話はよくあるが、
中華だって同じようなものだ。
丸い大テーブルは別として、
テーブルで向かい合い、気取り無く手を動かし、
一つの皿の料理を分け合う。
小皿を渡しあう。
うっかり、自分の箸で取り分けても気にしない。
気が置けない間柄だからこそできること。
会話も弾み、食も進む。
I氏は、食べるのが早い。
メタボを気にしていると言いつつも、量も多い。
私の方は、量は少ないのに、食べるのは遅い。
「ごめんなさいね。もう少し待っててくださいね。
頑張っていただきますから」
「いいですよ。ゆっくりで。残してもいいですよ」
「いいえ、折角とっていただいたのですから頑張ります」
食べる私をI氏はニコニコ見ながら待ってくれる。
デザートは少し残してしまったけれど、見守られながら完食。
「ごちそうさまでした。おいしゅうございました♪」
「では、行きますか」
「はい」
お店を出て、裏道を通り、二人だけになれる場所へ向かった。
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