ツンツン
「怒ってますね」
待ち合わせ場所に立っているI氏の後から背中を携帯の先でツンと小突く私に、
I氏は、ニコニコ振り返り言う。
約1ヵ月ぶりの逢瀬というのに、私はツンツンしていた。
LHのエレベータに入っても、近寄るI氏を
「変な事が書いてありますのねぇ」
などと、注意書きを指す振りをして何気なく翻しいなす。
「かなり怒ってるのねmyちゃんは」
「別に・・・・」
ソファーに並び座り、グラスを乾杯と合わせても、
ツンと視線を逸らす。
「いいですよ。怒っていても。
怒っているmyさんも可愛くて良いですからね」
まぁ怒ってなさいという風に、I氏はゆったりと寛ぎの姿勢になった。
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私は何を怒っていたのか・・・
ここのところのI氏とのメールが、さっぱり面白くない。
でもそれは、もうそろそろ来るであろうと予測していたこと。
恋が進み、馴染みが深くなることで生じるオトコの狩猟本能消滅。
メール激減、テンション急降下。
分かっているの。『おと恋』でも何度も何度も言っていること。
オトコってそんなモンよ。
安心し始めた途端、マメやかなI氏ですら、そうなるのだから。
自然の摂理、オトコのDNA。
おぉ〜来ましたね〜ってなモン。
ただその為に、今回の逢瀬が中々決まらなかった。
それが私をイラつかせていた。
会話が減っているので、現在どのような状況になっているのか分からない。
忙しいのか、余裕があるのか。
忙しいのに誘うのも気が引ける。
私より、I氏が忙しいと思っているから、中々自分都合では誘えない。
その後の話で、I氏は私が誘うのを待っていて、プチスネしていたらしいけれど、
それも、コミュニケーションがあれば、推測できるもの。
当日になっても、ちぐはぐなやり取りで場所もなかなか決まらずに、
二転三転後やっと決まった。
まぁ・・・でも、逢えるのだから、こんな事で怒っても仕方がないと、
ひとまず道すがら気持ちを収め、待ち合わせ場所に向かう。
そして、待ち合わせ場所にいたI氏の背中を携帯の先でツンと小突いた。
「怒ってますね」
そのI氏の言葉で、怒ってやれと天邪鬼が顔を覗かせた。
ニッコリするつもりだったのに、ツンとなってしまった。
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「もう、安心しきってるのでしょう?」
「手抜きだわ」
I氏に愚かな事と分かっていながらウダウダ言ってしまうわが身に、悶えんばかり。
私は、何を言っているのだ。
まったく、仕様も無い事をずっとI氏に言っている。
「myちゃんはどうしたの?」
初めての恋じゃあるまいし、
生娘のようなことを言うのは可笑しいとでも言うようにI氏は笑う。
私だって滑稽な事を言っているとは思うけれど、
高飛車オンナは、ツンツンすることで、相手の反応を伺いたい。
改めてもらいたいとか、気付いてもらいたいというよりも、
ちょっと怒って、スネてみたい。
そう。甘えたいのよ。
解っている上で、不満を吐露すると言うのではなく、
ここぞとばかりに駄々っ子になって、
フォローしてもらいたい。取り成してもらいたい。
「ふーん。じゃあmyちゃんはさぁ〜、
ずっといつも、myちゃんmyちゃんって言ってくれる男じゃなきゃイヤなの?」
「そうよ」
「それをしなくなったら・・・」
「ポイしちゃうわ」
「俺も?」
「そうよ」
無茶苦茶なことを言っている。
その無茶苦茶は、私の甘えだという事をI氏は理解しているだろう。
もちろん、私も多少甘えた口調でスネているのだが・・・
こんなやりとりをしながらも、時間は過ぎていく。
時間に余裕があるわけではない。
工面し合った大切な時間。
なのにソファに横並びに距離をあけて座ったまま、
ごちゃごちゃと話している。
確かに、話し合いは大切だが、もう収拾段階。
お互いに、本当にピリピリする前に終えなければ、
本当の喧嘩になってしまう。
「けなげなところがあるかと思うと、こんな風にいきなり怒るんだ」
「ジェットコースターなのよ。爆発しちゃうの。溜め込んじゃうの」
「溜めちゃいけないよ。頭ばかり使いすぎて、あまり真面目になりすぎないで」
「だって、真面目なんですもの」
I氏に背を向ける。
「確かに、真面目なんですよね。myさんは。
真面目なのに、こんな処に男といる。
高貴で上品なのに、床上手だったり、
うぶな雰囲気も出すのに、喘ぎはセクシーで。
そのギャップがたまらない。
口では怒っているのに、カラダは求めている。
ほら・・・」
背を向けている私を、後ろ向きにソファーの背もたれに押し付け、
スカートをたくし上げられた。
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結局こうなる(笑)
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