はい。
午前中、行きたかった博物館の特別展覧会を観た後、
午後、遅めのランチをI氏と約束していた。
実は、前回逢った日は、その特別展を観に行く予定だったけれど、
アチラを優先に、日をずらしていた。
それで、この日は特別展を優先にし、観終わった後の時間に合わせてもらい、
「遅めのランチ」ということに。
待ち合わせの場所まで、電車の中でメールのやりとり。
今●●です。
こちらは××です。
▲▲を過ぎたあたりです。
あと10分くらいです。
今駅に着きました。
もうすぐです。
状況連絡だけのメールにも恋しさが募る。
もうすぐI氏に伝えられる。
言えなくて、I氏を不安にさせてしまって、
私自身も迷っていた問題から解放される言葉を。
そう思うだけで、嬉しくて
着信ランプが点る携帯を両手でぎゅっと握り締めながら目的地へ急ぐ。
ほぼ同時に到着して、地上に上がる。
「雨、まだ降ってますね」
「今日は止みそうにもありませんわね」
お互いに傘をさしているので、少し距離をあけて歩く。
日中の繁華街では、このくらいの距離が丁度良い。
「mimiさん、この辺りはお詳しいですか?」
小さなレストランが並ぶ街区。
「ええ。turfですわ(笑)」
「どこか、お薦めは?」
「行けませんでしょう?」
「たしかに。言えてますね(笑)」
そう。"お友達"ということなら気軽に行けるけれど、
もう、気持ちは"お友達"ではなく、大切なヒト。
馴染みのお店に一緒に行けるわけがない。
ただ会うというのではなくシチュエーションは逢曳。
上気した私の顔など、そこで見せられるわけがない。
雨も大降りになっていたので、少し暗めのイタリアンにすぐ飛び込んだ。
スプマンテで乾杯。
「菩薩はいかがでしたか?」
特別展の感想をI氏は聞いてくる。
「とても素敵でしたわ。日光様も月光様も素晴らしいお姿でね、
とても感動いたしましたのよ。
展示の方法がとても工夫されていましてね、バルコニーのような・・・」
「本日もお美しいですね」
I氏が話を遮る。
「え?」
「お休みのスタイルもいつもと違って素敵ですよ」
「ねぇ、Iさん。Iさんが私に特別展のことを聞かれましたのよ。
もう、本当にヒトの話を聞かない方ね」
I氏は、結構自分ペースで話をする性質(タチ)で、
前回も私はそこを指摘して、「見抜かれました」とI氏は驚いていたが、
全くそうなのである。
「もう、いいわ。結構よ。話さないわ」
「だって、お綺麗な女性には、先ず言わないと失礼でしょ」
「話を遮るほうが失礼です」
素直にムッ!と出来る。
「もう・・・そういう少し怒った感じも素敵ですよ」
「HA!」
メールでは、どっしりと落ち着いた文章をくださるのに、
実で話すと、茶化すようなことを言う。
でも、そのペースに巻き込まれるように、
ポンポンとずっと仲良しの友人のような会話になっていく。
楽しい会話も弾み、お腹もいっぱいになって、
3杯目のグラスを空けたところで、I氏が切り出してきた。
「ねぇ、で、どうなのよ。面接官のお返事は・・・
覚悟はできておりますから。はっきりとおっしゃってくださいよ」
「お返事ですね。そうですね。きちんとお話ししなくてはなりませんね」
「はい。どうぞ」
「では・・・・・よろしくお願いいたします」
たった一言。それ以上はない。
余りにも単純な言葉にI氏は、拍子抜けした表情。
でも、私なりに全てがこもっている言葉。
「本当に?えっ?いや、もうずっとドキドキでしたよ。
ごめんなさいが出たらどうしようって」
「覚悟はできているなんて仰ったじゃありませんか(笑)」
「いや・・・それは・・・ふぅ〜。いいんですか?」
「はい」
「いや・・・その・・・出ますか?」
「はい」
「では、出ましょう」
「はい」
お店を出て、I氏がそろりと言う。
「Siestaは・・・いかがでしょうか」
「Siesta・・・・はい。そうですね」
「あの、ここからですと・・・ラブホテルとかでもよろしいでしょうか?」
「はい。構いませんわ。この辺りですと・・・ね」
「失礼ですかね」
「そんなことございませんわよ」
LHの方が好きなどとは、まだ言えない(笑)
それらの建物が並んでいる街区へ傘を深めにさして二人近づいて歩き始めた。
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