E strano
私は迷っていた。
でも、何に迷っているのかは、自分自身もわからない。
翌日I氏へ正直にメールを送った。
「昨日は、周到な準備でのおはからい、ありがとうございました。
お心遣い感謝いたします。
帰宅電車より頂きました早速のメールも
守って下さっているような心地が致しました。
でも、気持ちの整理が必要かと思います。
こんなにも迷うことなどなかったのに・・・・ E strano!」
「乙女、姫、お嬢、馨しきその女艶
sarem felici・・・ですか・・・・?」
E strano!は、椿姫のヴィオレッタの台詞。
「不思議だわ」
椿姫上では、諸説ありますが、
私としては、ダメはダメ。好しは好しとスパッリとしてきた自分が何故?
という意味での投げかけ。
それに対してI氏はsarem felici 幸せ・・・ですか?と。
これも椿姫のなかの切ないヴィオレッタの台詞。
和歌を送ると和歌で返す。
楽曲で送ると楽曲で返す。
端から見ると、作り物っぽく、気障で、鼻持ちならない感じですが、
愛の言葉を交し合うよりも、緊張感があって、碁を打つような感じで、
心に響くやりとり。
でも確認もしてみたくもなる。
「私は、いちいち手の掛かる、ダメ出しもする面倒な女。
それに、私が好きになってしまいますと、一途なのですのよ。
二週に一度、一週に一度、
いいえ、毎日でも逢いたいくらいになってしまいますのよ。
もちろん、それは叶わないこと、不可能なこと。
ですから、繋がれる手段であるメールに気持ちが入り込んでしまいますのね。
相手にもそれを求めてしまったり・・・・
案外、気重する女かもしれませんわ。
それでも大丈夫ですか?」
「女性は、もともと、面倒なもの、それがいいんじゃないですか?
相手に確認を求めるのは、女性の常。大丈夫っていうのも、男の常。ってか?
メールのやり取りは、今までの経緯を鑑み、
この程度の返信能力でご寛容頂けませんか?」
大人の男性らしいどっしり感のある返信が返ってくる。
ほろッと引っかかりのかけらが一つ落ちた。
ただ、メールも良し悪し。
単語一つに過剰反応してしまたったり、捉え方で勘違いをしたり、
行き違いもあったり・・・
特に私は小さなジャブにもギャラクティカ・マグナムで返してしまったりで、
「頃合がまだ把握できず、突然の変調に心を砕き、
ご不快なメールをしたかと、心痛めておりました」
などと書かせてしまうこともあった。
それでも、言い訳めいたことや、私を非難することはない。
「まだ、人格的に信じられず手探りなのも無理はないですよね。
先日来お預けをくらっている「YES!」のご回答を頂こうと、
私もメールに気合が入り、かえってご無理をかけたかもしれません。
誤解をさせてしまう要因も私がつくったわけですし。
綻びが見つかれば、それが大きく見えてしまうのが恋愛です。
バックグラウンドは語らず、推測や感性を読み取って、
修正作業まで込みの恋愛は、かなりの力量が問われると・・・・。
でもなかなか、楽しゅーございます。
myさんとは、運を頼りに来た感じですが、
これからは、疑念がわかないくらい、
善意的解釈を前提にお話できるとお互い楽ですね」
また、ほろりと引っかかりのかけらが落ちる。
それでもまだ迷う私に、
「お暇な時に、私の恋メール、読み返して下さい。
私が本当にmyさんを気に入ってるって確信されると思います」
私とI氏とのやりとり。何度も読み返す。
改めて読み返すと、その時はまだ半ば「そんな事言ってもそのうち・・・」
といった恋愛曲線を思いうかべ、
I氏というよりも、"いつかは褪めるもの"という恋愛に対する嫌気で、
真摯な言葉や思いに対しても冷めた目があった。
アプローチがあった時、「もう恋愛はしばらくいいわ・・・」
そう思っていたから素直に飛び込めなかった。
心の準備が出来ていない状態での猛攻撃にもたじろいでいた。
自分の中ではすっかりと解決していたつもりでも、
過去の恋愛の古傷はチリチリとどこか燻っていた。
hideとの別れのショックや
shunに振り回された疲れで、
恋愛をどこか信用できないでいた。
でも、読み返せば読み返すほど、言葉の深い意味を汲み取ることができて、
こんなにも大切に思ってくれているということに感動し、
読みの浅かった自分が情けなくもなり、
私の定まらない心でI氏を不安にさせてしまっていたことに、
申し訳なさが込み上げてきた。
私は、やはりI氏が好き。
I氏に対しての好感が、日々積み重ねられ愛していると言っても良い。
引っかかりかけらが、二つ、三つ落ちていく。
メールで言葉を交わしあい、カラダで情を交わしあい、
更に行き違いは起こっても、解決も出来、
大方疑問もなくなってきている。
きちんとお話したいということで、次に逢う日は決まっていた。
あとは、直接お逢いして、話して、安心できたら
臆病になっている自分を払拭できたら・・・・それで決める。
そう思っていた。
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